経営と現場を接着するプロダクトマネジメントの技術
経営戦略とプロダクト方針の一貫性を保つために必要な考え方や立ち振舞いのまとめ。開発は進んでいるが細かい掛け違いで芯を食ってないと感じた時にオススメです。
スタートアップは短いスパンで経営戦略がアップデートされるので、それに合わせてプロダクトの方向性を一致させる取り組みはとても大事。
少人数組織では阿吽の呼吸で進められた事も、急成長していく組織では微妙な掛け違いの積み重ねでズレていくので、意識的に経営と現場を接着させる意識を持っておくと、方向性が一致する。
例えば、権限委譲時にPdMの裁量 = 自由になってしまうと、経営方針とプロダクト開発方針がズレて不健全化する事もあり、この手のトラップ事例は、ビルドトラップを避け顧客に価値を届ける にも詳しく書いてあるので参考になります。
1. 経営と現場を接着するパイプラインを作る
「経営と現場を接着する」と呼んでいるが、経営と現場間で認識や理解のズレを起こさないパイプライン作りを意識して、プロダクトマネジメントしています。
パイプライン構築で、経営方針とプロダクトの方向性を一致させるために、例えば下記のような取り組み
単一プロダクトを扱う会社はKPIもシンプルだが、複数プロダクトを展開している会社は事業責任者よりもう一段階上のレイヤーがKPI推移や仮説検証の結果を把握することで事業シナジーを作るための横断的な意思決定精度が高められる。
パイプライン作りは、情報をオープンにするだけではなく、直感的に伝わりやすい資料化、読む側の負担が増えないように資料のテンプレート化、重要な数字だけに絞ったダッシュボード化などで、コミュニケーションコストを下げつ意識すると正しい権限委譲で組織がスケールしやすくなる。
2. 実行プランがイメージしやすいロードマップでチームの認識を揃えていく
ロードマップは、現時点から90日〜180日位で実現可能なタスクを可視化して3ヶ月単位で見直す事が多い。
仮説検証の結果や外部要因でのタスクを組み替えも多いので、数年先の長期計画ではなくチームメンバーがロードマップを見て具体的な開発プランニングができる状態を意識して作る。
そのロードマップを叩きに中間指標のファネル化、UIデザインの考え方を擦り合わせていくが、特にPMF前のサービスでは、仮説検証を繰り返しながらロードマップを修正していくので検証結果がわかりやすいと方向性の考え方が経営とメンバー間でも揃っていきやすい。
3. 瞬時に理解できる要点をまとめたドキュメントで認識統一をしやすい状態にする
理解しやすいドキュメントは関係者の方向性がズレにくくなり裁量も広がり、生産性も上がるので良いこと尽くめだと思う。
逆に、経営と現場の意識が噛み合わない状態は、お互いのフラストレーションを引き起こしてマイクロマネジメントになりやすい。
そのため、時間が限定されているマネジメント向けには意思決定材料を直感的に理解できるように図解する、現場向けにはUI案を作る事もあれば、中間指標のファネルを可視化したり具体的な手段をすり合わせられるドキュメントを作ることで、それぞれに必要な情報がインストールされる。
昨今は、SlackやNotionでさくっとシェアしやすいように1920 × 1080でスライドを作っているが、例えばこのように検証UIとグラフ、ファネルを組み合わせて1枚でわかりやすくする事で直感的に理解しやすくなる。
適切な情報シェアをして関係者の解像度を上げていくことで、方向性が一致し自走しやすい環境が生まれてくる。
仮説検証の結果は仮説に対して成果がでない理由も優良な情報なので、結果をオープンにする事で、仮説思考が噛み合ってくるので、失敗した場合もわかりやすい形で情報共有するのが大事。
4.仮説検証前のタスクと検証後のタスクを住み分けてマネジメントする
ロードマップ施策がPLへどのように影響をするかを会話できるようになると経営と現場の距離がぐっと近づくし、自分がハブになっていく。
不確実性の高い施策は事業計画における予実が予想しにくく、ズレが大きくなる可能性もあるので、非連続的な成長 / 連続的な成長を切り分けて思考する癖をつけている。
非連続な成長は「打率3割の成功率」「仮説検証を爆速で回して期待値とのギャップを早く埋める」の考え方で実行し、効果が高ければ追加リソース投資を検討する。その仮説検証の学びは経営 & 現場に共有して次の施策に活かせる状態を作っていくことで、意思決定基準をすり合わせていく。
連続的な成長は、局所最適化の積み上げでKPI達成とユーザー体験を磨き込んでいくが、短期の予実に大きなギャップは生じにくいので、前者よりすり合わせ頻度は低めにできる。
まとめ
経営と現場を接続するプロダクトマネジメントは、スタートアップの成功に欠かせない要素で、経営者と現場チームが連携し、プロダクトの方向性を共有することで、効果的なプロダクト開発プロセスを築き、成功への道を切り拓くことができます。
経営方針とプロダクトのズレを無くし、チーム全体が一体となって目標に向かうために、このアプローチを取り入れてみると良いかもしれません。
こちらは以前書いたプロダクトマネジメントの考え方
経営者の思考がわかりやすく言語化されてる記事もオススメ。相手の思考を想像すると接着しやすくなります。