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スタートアップのデザイン責任者がやるべきことまとめ

最近、相談を受ける事が多いデザインマネージャーの役割を経験をもとに書き出してみました。長いですが、迷った時の辞書代わりに使ってもらえるとありがたいです。

ここでは会社の規模が30名以上、デザイナー5名程度を超えた組織をイメージしてます。ユーザー体験に責任を持つサービスデザイン責任者と組織責任者の話は混同しないほうが良いので、今回は組織責任者にフォーカスしてます。

全体のストーリーはこのスライドで掴めると思いますが、もう少し具体的に実行した事などをリスト化したので参考になればと思います。

デザイン責任者として実行した事まとめ

デザイン責任者の仕事は何かを学ぶために行動してみた
・実績を上げてる会社へ一週間研修に行かせてもらい、成果をあげてる理由を分析して、100ページ位のレポートを作った。
池田さん土屋さん深津さんなど有識者に相談して感覚を掴んだ。
・それらの行動は自分自身の勉強にもなったが、実績をあげてる会社の実例を社内説得時のエビデンスとして使う事で理解が得られやすくなった。
・マネジメントに必要な人事労務周り、下請法、著作権、契約まわりの話を間接部門と直接交渉できるよう色々な人に教えてもらいつつ自分でも勉強した。


組織を独立化させ、デザイナー全員集めて組織整備に伴う権限集約
・自分で承認できる予算を確保して意思決定と実行速度をあげた。
・スキルセットに合わせて事業部横断のアサインを可能にした。
・サービスのステージ次第で、新規人材とグロース人材など得意領域のアサインをできるようにした。
・採用方針を決めて人材要件を決めた。
・各デザイナーの座席はプロジェクトチームの席に置いたままの状態をキープして、組織独立化がコミュニケーション希薄の理由にならないようにした。
・リソースを抱え込んでると思われないように、誰がどこにアサインされてるのかアサインシートを可視化した。


必要スキル人材の独立部隊化
・UIデザイン作業とプロモーション系のクリエイティブを同時に作業するのは厳しいので、プロモーション系の仕事は横断マーケチームを作って引き受けられるようにした。
・常時必要無いが、テンポラリで必要なスキル人材(動画制作/CIデザイン)は単体で抱えて社内デザインスタジオみたいな形で仕事を受注した。


独自予算を確保してPL作成(コストセンターなのでPは無いが...)

・デザイナーの人件費 / 外注費 / 消耗品費 / ライセンス費 / 雑費 / 接待交通費などを確保した。
・それまでは、フォント購入、素材、ツール代など都度事業部判断だったので、承認プロセスに時間が掛かっていたのを短縮した。
・フォント購入時など、ノンデザイナーに説明するのがストレスな業務を職能マネージャーが判断、実行できるようにしてマネージャーコストを削減した。
・人件費は作業時間按分して、サービス側で予算消化すると同時に実体リソースを可視化して、翌年どれくらい必要か議論できる状態にした。
・各事業部の予算策定時、多くの場合デザイナー予算を少なく見積もってるので適切な見積もり修正・交渉した。
・新規事業の予算が作られる時に、デザイナー予算と要件を決めてリソース調達プランを検討した。
・それらの予算決めの時、呼んで欲しいと社内で声を上げ続けた。


他部門からの「ちょっとお願い系業務の予算化
・採用ページ制作や名刺制作、封筒など総務系業務、コーポレートサイト制作を『空き時間でお願いします』と120%ルールで対応していたのを正しく予算化してリソースを確保するか、外注で対応するのか決めていった。
・予算が確保できないがお願いしたい系の業務は基本的に断る方針にした。
・社内掲示物、全社イベントなどでメンバーが自発的にやりたいと言う場合に関しては目標設定に追加した上で本人に任せた。
・その上で、サービス側の責任者からスケジュール遅延のアラートが来た場合はキャパオーバーなので何かしらの対処をした。


メンバーがサービス開発作業に集中できる環境整備
・独自でアシスタントチームを作り、経費精算、書籍購入、新入社員受け入れ時のPCセットアップなどサービス開発以外の作業を極力減らす努力をした。
・Shutterstock と iStock を月額契約して購入した方が早いアセットは稟議無しで購入できる仕組みを作った。
・勉強会などは業務時間でも自由に行って良い制度にした。


PC・作業環境の整備
・適切な環境で仕事ができるように、入社時に選択できるPCラインナップを整備した。
・マウスやペンタブなど必要なツール、ソフトウェアが抜けていたので、入社時にオプションで選べるようにした。
・新入社員の初出社時は、1時間以内に作業を開始できる環境を目標にした。
・それらのセットアップは専属のアシスタントチームの仕事にして、メンバーを作業に集中できるよう環境にした。


書籍購入の福利厚生とレンタル
・作業に必要な書籍は基本的に承認無しで購入できるようにした。
・チーム全員に購入本のタイトルが可視化される状態を作る事で、自浄作用が働き、マネージャーが本購入を承認するという仕事を減らした。
・購入書籍は専用本棚に保管して自由にレンタルできるよう仕組み化した。
・書籍の感想レポートを流す専用のメーリングリストを作って、感想を流す事でナレッジをシェアできるようにした。
・管理者が居ないと紛失するので、アシスタントチームで運用した。


デザイナーの採用フロー整備
・人材要件を決めて職種別に言語化した。
・採用妥協しない宣言をして、カルチャーフィットする人材の採用に努めた。
・事業部で独自採用してた時は、基準がバラバラだったので、最終面接は全部自分が担当する事にした。
・面接基準が整うまでは一次面接は全て自分で行い、合否の理由を書き出して現場の採用担当者並びにHR採用担当向けに可視化した。
・採用に関わるメンバー意思疎通を図るために、メーリングリストを作って、結果はすべてそこに集約するようにした。
・UIデザイナー向けの採用課題を作って必要に応じてプロセスに盛り込んだ。
・めちゃくちゃ良い人から応募がきた場合、地方でもどこでも3日以内に現地まで会いに行って面接&アトラクトをした。最遠は福岡まで行った。
・採用活動を効率化するために、地方の採用イベント、新卒向けの大学周りは禁止にして自社イベント実施でプレゼンスを上げる活動に絞った。
・HRのクリエイター担当者に、週1位でデザイナーとランチに行ってもらいどういう職種なのか理解してもらうように努めた。


オファー後の受諾率を上げるためにクロージングは自分で責任を持つ
・オファー後のクロージングは自分で責任を持つことにした。
・悩んでいる人には何故あなたと一緒に働きたいかToでメールを送った。
・見送るケースも理由を丁寧に伝えた。1年後に再応募してもらって採用したケースもあった。


社内リソースが追いつかずGoodpatch社と業務委託契約
・採用妥協しないと決めた分リソースが追いつかない状態だったので、Goodpatch社に助けてもらってAPP開発が回る体制を作った。
・社内常駐を熱望する各事業部のニーズに答えるためにGoodpatch社に定款を書き換えてもらうなど。諸々環境整備してもらう事で、社内常駐可能なパートナー化を実現した。
・これらを踏まえて土屋さんからは色々学ばせてもらって勉強になった。


アサインの考え方
・独立化のメリットは部署異動無くプロジェクトベースでアサイン可能に。
・基本は本人がやりたい領域・サービスへのアサインするが前提。
・ただ、全員の願いを叶えるのは無理なので、目標設定に課題を出して乗り越えたらチャレンジアサインを実施。
・事業部から指名があった場合は、基本的にその人をアサインする。
・デザイナーは担当したいサービスがあれば、指名を獲得できるようにPRして指名があれば調整を試みた。


デザイン組織専門の広報活動を実施

・単発の採用イベントを中長期でプレゼンスを上げる活動に切り替えた。
・カッコつけずに現状組織を外部に公開して協力者を募集した。
 - https://www.slideshare.net/tsubotax/ss-50222332
・デザイナー専任の広報をTwitterで探して採用して、半常駐をお願いした。
・UI Crunchを開催し採用関係無くデザイナーが訪問する事で認知をあげた。
・イベントに出てくるご飯はなるべく美味しいモノをお願いした。
・組織のエバンジェリストとして、カンファレンスや講演会に参加し、広報/メディア活動を行った。
・外部メディアに記事を書いてもらう事で外から社内の認知度をあげた。
・他社のデザインイベントにも呼ばれたら断らずに積極的に登壇した。
・リファラル採用/直応募採用の方が、入社後のパフォーマンスが高いのを可視化して、広報活動予算を増やす調整をした。


匿名デザイナーを会社から無くすように努めた
・採用ページではイニシャル表示、SNSで発信不可だったので、ガイドラインを作って、自社業務をSNSで発信可能、ポートフォリオ掲載可能に整備した。
・メンバーの帰属意識を高めるために、所属してる事を自信を持って話せるよう個のブランディングを活かすと言う方針にした。
・スタッフが知人を紹介したくなるノベルティを作った。
・対外的な技術情報などの発表やLTは自由に参加できるような方針にした。
・各サービス毎にスタッフロールを作りたかったが実現には至らず。


社内の仕事でも断れるという文化醸成
・社内の仕事でも下請け的な感覚だとうまくいかないので、フィットしない場合は仕事を断る勇気を持つことにした。
・リソース調達責任があったので外部パートナーを数社確保し、何かあれば紹介する事でバランスを保った。
・外注化で上手く成果がでなかった場合、こちらの条件を飲んでもらう事で内製化にシフトした。
・今後枯れるであろう技術は社内で担わず社外リソースを検討して、ライン管理も含めて委託した。
・「ガワ替えで良いからよろしく」と呼ばれるようなメディア量産系の仕事はモチベーションが持たないので内製アサインするのをやめた。
・デザインに理解のある事業部と特に良好な関係を築いて実績を作った。
・逆に理解が無く、下請け扱いが改善しない部門は距離をとった。


外部コンサルを入れて困ったら相談できる環境に
・一時期深津さんにコンサルしてもらっていた。
・深津さんと初めて会ったのもこの時。


導入するデザインツールを自部門で意思決定し全社横断に適用
・SlackやPrott、Invisionなどのツールを事業部毎に決めるのではなく、全社横断で合わせる事にした。
・ツール予算を確保した事で、新ツールを試して検証できるようになった。
・新ツールを試してみたい人はレポートを書く条件付きで購入承認した。
・トライアル結果が良さそうな場合正式に導入し、そのような動きを個人の発揮能力として評価した。


ユーザーインタビューなど方法論を組織にインストール
・これが中々難しくてまだ模索中。
・方法論だけだと精度にかなり差があるので、属人化してしまう。


評価プロセスと基準を整える
・評価プロセスの話は追って具体的に書くけど、発揮能力 / 成果評価を切り分けて評価することにした。
・プロジェクトメンバーから評価リファレンスをとる仕組みを作った。
・デザイナーの給与は職能責任者が決定する仕組みにした。
・数値ドリブンだとA/Bテストの結果ばかり自己評価に記載する人が多く、新しい技術移行にチャレンジするモチベーションが薄かった課題を改善した。
・アサインが流動的なので、月初に前月のリファレンスして欲しい人をスプレッドシートに自ら記載してもらい、期末にヒヤリングするようにした。


自分がプレイヤーとしての感覚を失わないためにしてた事
・組織責任者とプレイヤーの人格を分けてスイッチを切り替えられるように訓練した。
・プレイヤーとして何かしらのプロジェクトに必ず参加して、サービス感を失わないように気をつけていた。
・新しいツールが出た時は自分で試して意思決定の理由を説明できる状態に。
・いつ会社をクビになっても慌てないように、転職エージェントと定期的に会い、自分の市場価格を客観的に理解しておく事で精神状態の安定化。
・外部の市場評価を認識する事で、最悪クビになってもなんとかなる覚悟を持ってからよりアグレッシブに生きることができた。


マネジメント兼プレイヤーとして時間を捻出する自分なりの心得
・信頼できるアシスタントを採用して自分のリソースを150%に拡張した。
・飲み会は全部受けたら死ぬので、2回誘われたら行くルールにした。
・メンバーから「あの人のやり方に納得いきません」と言う報告の1度目は「本人に直言しして先ず話し合ってみよう」という直言文化を提唱した。
・ただし、2人以上から同じようなアラートが上がってきたら何かしらの対処を試みるように動くようにした。
・Slackは可能な限りオープンチャンネルを推奨して、アラートが上がってきたら過去ログから状況を把握できるようにした。


その他反省点した事
・アイトラッカーを導入したが定着できなかった。インタビュールームの稼働率は高かった。
・横断のデザインレビューは色々試したけど、上手く実行できず横断的な開催は諦めた。プロジェクト横断の品質管理方法は現在も試行錯誤中。(良い方法教えてください)
・その他も色々あるけど思い出したら書きます。

あとがき

この前、クックパッドの事例を池田さんから聞きつつ感じたのは、デザイン組織を一つにまとめあげてカルチャー、環境整備が済んだら、採用や一部の機能を横断化させて、フェーズにあわせて横と縦のバランスをうまく組み替えていくのもありかと思いました。

デザイナー横断組織の変遷
http://techlife.cookpad.com/entry/2016/07/15/092518

まだβ版としてるのはこれが正解ではなく、色々な流派があると思うので、デザイン系のマネジメント記事があればこのマガジンに追加していきたいと思います。

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坪田 朋
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